眠り姫

「わたし、無精をきめこんだの、眠っていたのよ。ここでは少しでも暇があると、眠る習慣になってしまったわ。わたしって、ほんとうに無精なの、きっと絶望のためだと思うわ。あなたがくる報せを受け取ったとき、わたしは自分にこういったのよ──どうかこれが、わたしの眠り癖の最後となりますように、って。そして、いわば病気をすっかり治してくれる眠りに身を任せたのよ。……」 (アガーテ)
  R. ムージル『特性のない男』 第2巻 第3部 第2章・信頼 (加藤二郎 訳/松籟社・III. p.205)