二百十日

 夜が明けるとカーテンが赫く染まっている。空が朝焼けていた。

 2018年10月27日から東京都美術館で開催されるムンク展のチラシに目を通す。今回の展覧会はオスロ市立ムンク美術館のコレクションによるものらしい。
 企画展の目玉作品として喧伝されている「叫び」は、オスロ国立美術館所蔵のどちらかというと有名な方ではなく、ムンク美術館所蔵のもの。
 2つの「叫び」は、画法の違いのほかにも、画面右側の色調や赫い空のうねり描写の具合などに違いがある。

 2つの「叫び」から「水曜どうでしょう」の「ヨーロッパ・リベンジ」シリーズ(1999)を思い出して、番組の録画を見る。
 過酷なスケジュールの北欧レンタカー珍道中。せっかくノルウェーまで来たんだからムンク「叫び」くらいは観て行こうと、高速道路から下りてオスロ市に寄り道。しかし毎度のことながらろくに下調べもしない一同のこと、国立美術館はあいにく休館日。それでムンク美術館の「叫び」を観てきたというお話。
 ついでながら、このときムンク美術館で買った「叫び」の人の等身大風船人形が、その後の道中でいつしか「ムンクさん」と呼ばれるようになって大きな役どころを演じることになるのだけれど。

 それからもう一つ、ムンクの不思議な写真活動を紹介していた港千尋『映像論』を思い出して、再読する。
ムンクが写真を撮った時期はふたつに分かれており、前期が一九〇二年から一七年、あいだを置いて後期が一九二六年から三二年となる。》
《露出時間が一秒を切るようになって、写真がますます存在の記録として考えられていた時代に、逆に露出時間を長くとって、被写体を動かしたり、あるいはレンズの前で白い紙を動かしたりしながら、物事が消滅することはどういうことなのかを見つめていたのである。》
《カメラが人間ではなく人間の影を記録することを、魂ではなく魂の影を吸い込むことを、北の劇作家[ストリンドベリ]と画家は直観的に理解したのだろう。》
  (港千尋『映像論』、第II章・I. 魂の影 pp. 109-11)
 観たことのないムンクの写真作品をこの機会にまとめて観覧できれば素敵だけれど、まだムンク展の詳細な展示作品目録は公開されていない模様。

 台風に刺激された前線の影響か、夜になると降ったり止んだりの雨になる。


ムンク展-共鳴する魂の叫び」特設サイト
2018年10月27日(土)〜2019年1月20日(日)
東京都美術館
https://munch2018.jp

映像論 〈光の世紀〉から〈記憶の世紀〉へ (NHKブックス)

映像論 〈光の世紀〉から〈記憶の世紀〉へ (NHKブックス)