旅の残り

 先の週末、使用期限のせまった青春18きっぷの残りを使い、ちょっと出かけた。
 なんとなくディーゼルカーに乗りたくなって、乗ったことのない路線の列車に独り揺られてみる。だけど旅の気分はいまひとつ盛り上がらず、なんだか空回りした気分で帰宅した。

 それでも今こうやって思い出してみれば、途中下車した駅で駅前のスーパーマーケットのお惣菜コーナーに地方色を感じたり、今回は途中下車できなかったもののホームからの眺めがいい駅を見つけたりといった、ささやかながら旅らしい記憶がよみがえる。

 目的地に迅速確実に到着すべき「移動」ではなく、することもない宙ぶらりんな時と所に身を置くことに「旅」の味わいが生まれる。
 さらにその宙ぶらりんな時間と空間に目的外の広がりがたくさんあったほうが楽しい。車窓を眺めたり、買い食いしたり、寄り道したり、立ったり座ったり歩いたり。
 私が高速バスや飛行機より鉄道に乗りたいと思うのはそんな理由から。

 だけどこの夏は、せっかくの青春18きっぷもほとんどを「移動」のために気ぜわしく使ってしまった感じがする。
 金額的にはきっぷの元がとれたけれども、このきっぷからどれだけ「旅」の気分を引き出せたかという点では、今回は損な使い方をしたように思う。