背景と常識
1.
オリエンタリズムしかり、国境貿易しかり、当たり前の領域で流通しているぶんには、つまらないものでも、それをありうべからざるところに置き直すことで、落差が生まれ、あっと驚く位置エネルギーが生じます。
シュルレアリスムが着想したデペイズマンの技法です。
その技法を試みるならば、置き直すのがどんな「もの」かということだけでなく、むしろそれが普段はどんな「背景」のなかに置かれて見過ごされていたのか、ということに注意をはらう必要があります。
すなわち「背景」が変わるだけで、その「もの」自体は同じでも、引き立って見えたり、反対にくすんで見えたりもするのです。
意識の背景を、逆に意識の前景に持ってきて、なおかつ主役級のスポットライトを当てて詳細に検討してみましょう。
2.
スキャンダルを最も効果的に発生させる方法を考えましょう。
まずはじめに、その時その場でいちばんありえないことは何かを考えます。
もちろん、その思いつきそのままに、その時その場でそのあり得ないことを、実行に移すだけ、だったら馬鹿らしい。
大事なのは、その思いつきを具現化したときに発生するであろう、世間の常識と自身の良識との間で取り交わされる、丁々発止のやりとりを、とはあれあれこれ思案続行してみることです。
どうしてそれをするのがいけないのか、それをすることの魅力は何か、意義は何か、その魅力を、驚異を伝えるにはどうしたらいいのか、等々。
そんなぶつかり合いの中から生まれた、小さな火花こそ、新しいムーブメントを生み出す、貴重な種火です。