ヘルムート・ニュートン讃

 

 先日購入したヘルムート・ニュートン写真集『ポートレイツ』( HELMUT NEWTON "PORTRAITS" ・SCHIRMER/MOSEL刊・ドイツ版)に見入る。
 ひねりの利いた短篇小説集のように、くり返し写真を読み返して、巧みなカラクリの妙を味わう。

 上は同写真集の、「ヴェルナー・ヘルツォークバヴァリア 1980」のページ。
 下左は同じく、「ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーミュンヘン 1980」のページ。
 下右は、「ヴィム・ヴェンダース、ベルリン 1980」のページ。
 3人ともに当時の "ニュー・ジャーマン・シネマ" のムーブメントを代表する映画監督たち。

 (怪優クラウス・キンスキーとの決死の友情を思い起こさせる)ヘルツォークの困り顔と、(この写真の2年後の '82年に早世した)ファスビンダーのたるみむくんだ面構えに惚れ込んで、この写真集の購入に踏み切った。
 それに比べてヴェンダースの扱いがいい加減なのも皮肉が利いてて気に入った。

 今更ながらニュートン作品の写真としてのオモシロさにつくづくと感嘆しつつ、学びとる。
 フツーのそこいらにある下手っぴスナップ写真を装うぶっきらぼうな撮りっぷり。
 しかしその陰に見え隠れする、仕込みのしたたかさと、メカニズムの驚くべき活用法。