芸術家列伝

 このところヴァザーリ芸術家列伝』(白水Uブックス)を読んでいる。

 イタリアルネサンスの歴史を刻むその内容もさることながら、その語り口がおもしろい。
 人物伝の冒頭に教訓的要約的言辞をかかげる筆法。こんなふうに出来事や人物像を外側から描く語り口を身につけたく思う。

 日の当たる大道を堂々と歩んだ大作家に賞賛の文言を重ねた章よりも、メランコリックな人生を歩んだ作家の光と影を描いた章に関心のほうが僕には興味深い。
 遠近法に取り憑かれた画家、ウッチェルロの章が好き。それになにより、特殊な遠近法が用いられた不思議な静けさを湛えるウッチェルロの絵画作品が好きである。

芸術家列伝1 ─ ジョット、マザッチョほか (白水Uブックス1122)

芸術家列伝1 ─ ジョット、マザッチョほか (白水Uブックス1122)