THE TOKYO ART BOOK FAIR 2013 2日目


【THE TOKYO ART BOOK FAIR 2013 会場/窓鏡】

 出店した同室のブースには興味深い活動をしている方々がたくさん。
 昨日ざっと下見をしていて気になっていたブースの刊行物を購入する。

 僕の今年の興味関心の焦点は、「皮膚」「アラベスク」「グロテスク」「少女趣味」「ゾンビ」「レース模様」「情報量の多さ」「溶解感」「地図」といったところ。
 そして直接的に写真表現の筆法のヒントになりそうな物件も購入。

 反面、ちょっとした仕草やまなざしの投げかけ具合などによって「自分らしさ」「洒落た雰囲気」を醸し出そうとする行為にはものたりなさやむなしさを感じる。
 想定の範囲内からはみ出す勢い、作品がそこに「いる」感じ、確かな存在感あるいは気配、といったものを感じさせない展示物をも多く目にした。

 そんななかで、一般書籍として刊行されている川本史織の写真集『堕落部屋』(グラフィック社)がおもしろくて購入した。
 ファッション関係、アイドル、ゲーム好き、あるいはその方面への研究を続ける学生、あるいは無職ながらも趣味に勤しんでいる人。それぞれ日本のポップカルチャーを支え、活気づけ、悩みを抱えつつ、それでも取り組んでおられる若い女性たちの私室を撮影した、「部屋のポートレイト」の写真集。
 そしてその作者である川本さんと一緒にブースを構えておられた画学生/イラストレーターのマドモアゼルあんなさんの着せ替えイラスト集やミニ写真集(ZINE)も興味がわいて購入した。セーラームーンは好きだけどプリキュアは好きになれない、男性向きの要素が強いからかもしれない、などといったお話がおもしろかった。

 また、写真印画にスクラッチで描画を加える作品を制作しておられるT…さん(お名前の憶え間違いがあるかもしれないので後日確認)の作品も興味深かった。
 表面、皮膜への関心があるとのこと。だけどその作品を印刷にのせると平板的になって、その表層の質感がうまく伝わらないことがあるのが悩みだそうだ。

 東京都中央区活版印刷所「弘陽」のブースで便箋など購入。
 ブースにつめていた活版職人のおじさんの話もおもしろい。語り出したら立て板に水といった具合。
 「パソコンなんか全く使ってなくてね。注文も電話か持ち込み。なにしろ手書きで文章書くよりも活字拾って文章作る方が速くってね。こんど案内状作ったの。持っててよ。これ文章の下書きなんてしてない。活字拾いながら文章作ったの。あなた何やってらっしゃる? 写真、そうですか。写真やってる人は活版に興味ある人多いよ。違いをわかってくれるのかな。よく名刺作るの頼まれたりするよ」
 活版印刷の字の組み方にはそれを組んだ人の息づかいが感じられる。デザイナーの器用な割り切りとも違う、良し悪しとはまた別の手書き文字のような、根っこの変わらない人柄の匂いが染み込んだ、地声のようなものが聞こえる。

 終了後、ニセアカシア同人4人そろって信濃町にて祝杯。
 キリンクラシックラガー瓶ビール。
 石川直樹の活動についての話など