【吊り下げ電灯】
- ムージル『特性のない男』抜き書き
彼は、一般には祭りや儀式、偉大な同時代人や理念、そしてそれらに冠せらるべき名誉などに捌け口を見出すあの心酔の危機状態、つまり、人が誰のために、あるいはなんのために行なわれるのかも知らずに、他人から非難を浴びないために、明日はふだんの二倍下品になってやろうと心ひそかに準備して、それに参加するそんな状態でマインガストを賞賛したのである。
R. ムージル『特性のない男』(加藤二郎 訳)2-3-14
いずれにせよ彼は中間的市民層の外にいる密者である。そしてその性格的特徴を一言にしていうなら、中間層たる勤勉な市民たちとは共通せず、貴族と浮浪者の双方に共通している、あの無為と怠惰。
種村季弘「贋のプロレタリア」/『ぺてん師列伝』所収
- 作者: R.ムージル,Robert Musil,加藤二郎
- 出版社/メーカー: 松籟社
- 発売日: 1993/10
- メディア: 単行本
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