バーダーマインホフコンプレックス
レンタルしてきたDVD、「バーダー・マインホフ/理想の果てに」("THE BARDER MEINHOF COMPLEX"・2008年・ドイツ・150分)を2度観る。
劇中歌
オープニング:ジャニス・ジョプリン「メルセデス・ベンツ」
エンドロール:ボブ・ディラン「風に吹かれて」
1960年代末〜70年代末にかけての、ドイツ赤軍派(RAF)の誕生と崩壊に関わった若者たちを描いた、ドキュドラマ形式の劇映画。(R-15指定)
テロリスト、警察、政府、群衆。それぞれを感情移入させきらない視点で物語り、それぞれの英雄性とご都合主義との混在ぶりを多声的に描き出している。
オープニングのヌーディストビーチの海水浴のシーンが、全体を象徴する寓話性をはらんでいる。
人間は丸裸で海水浴をしている時ですら、浮気もすれば嫉妬もするし、流行に左右されもすれば上滑りな政治潮流に乗っかることもできる。
だとすれば、この世の人間が「自由」と「正義」に殉じた行動を起こそうとしたとき、それがどんなことになるか、推して知るべし。
そして、煮ても焼いても食えなさそうな、知略派の政府官房長官役を演じたブルーノ・ガンツの存在感は出色。
ことに、長官室の書類の並んだ会議テーブルの上に、コーヒーではなくてロブスタースープの鍋を持ってきて、「食べながら話すことにしよう。……君、お腹減ってない?」なんて言いながら、パンなしでスープだけ啜りながら真面目に内密な会議をしてるシーンの可笑しさ。同席した部下のきょとんとした顔。
ささやかな一場面ながら、一見良識派っぽいこの長官とて何だかおかしな人なんだと観客に印象づける、異化効果の光る名演出。