'80s 現象

 随分むかしに買ったまま、ろくに読んでなかった新書をあらためて読む。

 桜井哲夫『ことばを失った若者たち 〜'80s 現象〜』(講談社現代新書・787/1985年刊)
 1980年前後に20歳代だった(1960年前後の生まれ)、「新人類」などと揶揄もされた若者たちへの、1947年生まれの筆者の感慨が読みとれる。

 団塊世代と新人類世代とのカルチャーギャップ。学生運動の動乱の季節の記憶の近しさと、それに縁のない世代の増加。ラジオの深夜放送文化と、所ジョージによる変容。一方通行の言語コミニュケーション。アニメ・マンガおたく文化の萌し。アイドル文化。旅する若者像。同じ傾向の服装の(表層的な選択にすぎないはずの)好みの者たち同士で閉鎖的なサークルを形成するファッションセクトの兆候。村上春樹をマイナーな存在とみる価値観の差異(本書中では全く言及されていない)。等々

 1985年当時の過去完了形での戦後若者風俗講義。
 1980年前後に発生したであろう、文化界面における屈折のありようが、リアルタイムの筆づかいで伝わってくる。
 当時「新人類」だった若者たちは今では50代半ば。世代的な偏向の由縁はこういうところにあったのかと、たいへん興味深かった。