九月尽

   なにもせで過ぎゆきにけり九月尽

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九月尽 (くがつじん・クグワツジン)
   九月尽く(くがつつく) 秋尽く(あきつく) 九月去る(くがつさる)

 陰暦九月晦日みそか)を指す。陽暦にすると11月初旬に当たる。今日の作句例としては、陽暦九月晦日を詠ったものが多いようである。古くから三月尽、九月尽と並べて用いられてきたのは、春・秋を惜しむ気持ちあってのことであろう。古句に詠まれたものは暮秋の感じをこめて味わうべきである。今日でもただ何月尽とすれば季語となると解してはならない。

 * 傾城(けいせい)の小哥(こうた)はかなし九月尽  其角
   雨降れば暮るる速さよ九月尽  杉田久女
   妻病みて目尻の乾く九月尽  穴井 太

 角川春樹 編 合本『現代俳句歳時記』(角川春樹事務所)より引用

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合本現代俳句歳時記

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